【記念講演】社員のために社長としてできること【経営フォーラム】

2025年11月17日、今年から新しくスタートした「人を生かす経営フォーラム」の第1回記念講演に、オーケーズデリカ株式会社 代表取締役社長・杉本香織氏をお迎えしました。
杉本社長が語る“人を生かす経営”は、会場を温かい空気で包み込みながら、参加者一人ひとりに深い気づきを与える内容でした。
■弁当屋の娘からトップ営業、そして社長へ
1973年大阪生まれ。食品問屋で事務員として働き始めた杉本氏ですが、営業職への転身をきっかけに仕事観が大きく変化します。飛び込み営業を通じて身についた度胸と、「自分で売る楽しさ」の経験は、その後の経営の基盤となりました。

1997年に家業であるOK給食(現・オーケーズデリカ)へ入社。
2015年、2代目社長である兄の急逝を受けて事業承継。ここから杉本社長の「社員のためにできることをする」経営が本格的に始まります。

■ 経営スタイルは「サーバント・リーダーシップ」
杉本社長が選んだのは、トップダウンではなく“社員を下から支える経営”。
社長が社員の働きやすさを整え、社員が主役となる逆ピラミッド型の組織づくりを進めてきました。
「社長は、社員のために何ができるかを考える存在」
この言葉が、同社の経営の軸です。

■ 絶対的な衛生管理と“おせっかい精神”
オーケーズデリカは産業給食、学校給食、福祉給食、食品OEMなど多様な事業を展開し、現在は年商17〜18億円規模へと成長。
特に、
・50年間食中毒ゼロの徹底した衛生管理
・「急な注文でも何とかする」地域密着のおせっかい文化
これらが社員の誇りと働きがいにつながっています。

■ 社員を主役にするための実践
講演では、杉本社長の具体的な取り組みが紹介されました。
○若手抜擢と権限移譲――若手社員を工場長・部長へ登用し、「任せて信じる」文化を育成。
○年7回の面談――社員もパートも、全員の声を丁寧に聞く習慣。「不満の芽を早めに摘む」ことを徹底。
○感情の報酬――“頼られたい・必要とされたい”という根源的な欲求を理解し、日々の関わりを大切にする。
○EG(エマジェネティックス)で適材適所――思考特性を可視化し、互いに補い合えるチームづくりを実施。
○インナーブランディングの強化――理念を漫画化した「ビジョンマップ」
――おしゃれで統一感のあるユニフォーム
――会社の歩みをまとめたヒストリーボード
社員が自社を好きになる環境づくりを進めています。

■ 利益は社員へ還元し、働きやすさも徹底
利益増大プロジェクトの成果は社員へ還元。物価高騰時には全社員へ生活支援手当を支給しました。
産休・育休の取得推進、男性育休100%へのチャレンジなど、働きやすい環境づくりにも妥協はありません。

■ 社内の空気が変化し、会社は新たな段階へ
こうした取り組みを続けた結果、社内には大きな変化が生まれました。
●前向きな社員が増えた
●離職率の低下
●若手採用の成功
●労働時間15%削減
●人時生産性の向上

そして今、杉本社長が目指すのは、社員が主体的に動くティール型組織への進化です。
また、和食・精進料理の海外展開、ハラル対応など、「日本の食文化を世界へ広げる」挑戦も進めています。

■ “ごった煮経営”という温かい組織の姿
講演の最後には、杉本社長らしい表現で会社を語りました。
「会社はおでん鍋。みんなが自分の得意という“出汁”を出し合う」
個性の強い人も、不器用な人も、全員が必要で、全員が会社の味をつくる存在である——そんな温かいメッセージでした。

■ まとめ
今回の記念講演では、「人を大切にする経営」とは何か、その本質に触れる貴重な学びが得られました。
社員を信じて任せること。
小さな声に耳を傾けること。
働く喜びを共につくること。
どんな企業にも通じる、しかし最も忘れられがちな原点を思い出させてくれる講演でした。
杉本社長の姿勢から、“人を生かす経営”が特別ではなく、日々の積み重ねの中にあることを改めて学ぶ時間となりました。

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