尾鷲グループ9月例会 「辞められたら困る」という不安を乗り越えるには?~本質的な信頼関係を築くリーダーシップ

尾鷲グループ9月例会は、Enjoy Life代表の黒田美和氏を講師に迎え、「『辞められたら困る』という不安を乗り越えるためには?~本質的な信頼関係を築く、これからのリーダーシップ~」をテーマに開催されました。ホテル・飲食業界での約20年の経営経験を持つ黒田氏は、人材不足と離職率の高さという課題に対し、自身が抱えていた不安が判断を鈍らせた苦しい経験を共有されました。

■ 不安が招いた負のスパイラルと決定的な学び

かつて黒田氏は、仕事能力が高くスタッフに慕われる店長や経験豊富なマネージャーに対し、「辞められたら困る」という不安を抱えていました。この不安から嫌われることを避けるため本音で向き合うことができず、結果として自分の発言に一貫性がなくなるという負のスパイラルに陥った経験がありました。

黒田氏はこの状況を打破するため、人間力を高める努力や「社内木鶏会」の開催などに取り組みましたが、決定的な転機となったのは、あるコンサルタント(師匠)との出会い。師匠からは、「経営とは課題を解決していくこと」であり、そのためには「仕事の仕方」と「判断基準」の2つが重要であると徹底的に指導を受けました。

■ 不安を手放し、軸を確立するための抜本的な改革

黒田氏は指導に基づき、ぶれない軸を持つことを目指し、「人間尊重型経営」を実践します。常に意識すべき判断基準として、公正、公平、整合性、一貫性の4つの軸を明確化しました。

組織改革の柱となったのは以下の点です。

  1. 評価制度の抜本的見直し: 評価軸を「仕事能力」と「資質」の二軸とし、仕事能力が低くても資質が優れている人材を優先する方針を明確にしました。また、EQ(こころの知能指数)は意識的な練習で高められる(本人次第)と伝えました。
  2. 目標と利益分配の明確化: 「三重のアンテナホテル」を目指すという目標を掲げ、スタッフと共に生産者の現場に赴くなどのブランディングを実施。さらに、利益をどう分配するか(社員賞与を最優先とし、内部留保、役員賞与の順)を明確に示し、社員の安心感につなげました。

■ 信頼構築とリーダーシップの真髄

信頼構築のプロセスは「期待→指導→評価→信頼」が重要であり、特に「評価」においては、平等に、公正に、事実に基づいてフィードバックすることが信頼を深めると強調されました。

リーダーシップの姿勢として、山本五十六氏の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」の言葉を引用し、特に「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」という、相手の苦しさを認め、傾聴する姿勢が大切だと述べられました。

■ 参加者からの学びのポイント

参加者からは、「経営は課題解決である」という言葉が印象的だった、という感想や、「評価制度や人との接し方について、トライ&エラーを繰り返しながら、ぶれない軸を確立していくことの重要性」を学んだ、という声が寄せられました。また、「本質的な信頼関係を築くのは難しいが、課題となっている現状で話を聞けて良かった」という意見や、「未来に向かっての目標が明確化されると、迷いがなくなった」という気づきもありました。

黒田氏はまとめとして、「『辞められたら困る』という不安を乗り越えるためには、本音と建前をやめて、自分がぶれない軸を持つことが大事だ」と述べ、リーダーが一貫した姿勢で信頼関係を築くことの重要性を改めて示しました。

 

今回の例会は、評価制度の難しさや、人材不足(特に建設業や介護業における)という現実的な課題に直面する中で、「何を基準に判断すればよいか」という根本的な問いに対し、リーダーが自らの行動と姿勢を通じて模範を示し(やってみせ)、一貫した軸をもって信頼関係を築くことの重要性を深く学ぶ機会となりました。

●参加者アンケートより

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