第1分科会は、有限会社丸井食品三重工場 代表取締役社長 西山典孝 氏の報告でした。
丸井食品は1967年(昭和42年)創業の業務用調味料メーカーで、ラーメンスープや焼肉のタレなど液体・粉末調味料を製造しています。従業員数は約35名。特に伊勢うどんのタレはお土産物市場で高いシェアを持ち、地域の食文化を支える企業です。
■事業再建の歩み
西山氏は26歳で入社し、当初は配達業務を担当していましたが、財務の改善が急務となったことをきっかけに営業へ転身。「会社を守るために売上を伸ばす」ことを最優先に掲げ、全国を駆け回りながら難しい依頼にも前向きに応じ、売上を積み上げていきました。
過去には、社内トラブルにより製品開発情報が外部へ流出し、損失が生じるなど厳しい局面も経験しました。こうした出来事は、西山氏に「仕組みづくりの重要性」を強く意識させるきっかけとなりました。
その後、人口減少による国内市場縮小を見据え、海外展開を見据えた取り組みを開始。
HACCP、ハラール、有機JASなどの認証取得にも挑戦し、問い合わせや新たな商談の増加につながっています。過去に離れていった取引先から再び声がかかるなど、信頼回復の動きも見られました。
こうした取り組みの結果、売上は約2億5,000万円から約4億円へと回復しました。
■組織力強化と文化づくり
入社当時の社内には、古い慣習や働きやすさに課題のある面も残っていたと言います。また、一部に権限が偏るなど、組織運営にも歪みがありました。
そこで西山氏は、開発と品質管理の分離、社員全員との年1回の面談、資格取得支援(例:だしソムリエ1級)、HACCPの勉強会などを通じ、若手が挑戦しやすい環境づくりを進めてきました。
一方で、中心となる社員の不足や離職、改善力の弱さなど、現在も組織課題は残っています。しかし、82歳のパート社員「ちえさん」が“働けることが誇り”と語る姿に触れ、「ここで働いて良かったと思える会社にしたい」という想いが一層強まったといいます。
そのためには、全員が同じ方向を向くための「経営指針書」が必要だと考えるようになりました。
■経営指針書づくりと社風づくり
2021年から本格的に経営指針書づくりに取り組み、同友会の先輩から「思いと仕組みの両立」が大切であることを学びました。
最初の発表では社員が戸惑う場面もありましたが、4年目(59期)には部署ごとの方針作成や自主的な勉強会が生まれ、少しずつ組織の文化として根づき始めています。
4期目以降は、社風のベースとして「そ・わ・か(掃除・笑い・感謝)」を導入し、働く空間・コミュニケーション・人への姿勢を見つめ直す取り組みを進めています。
トップが一方的に旗を振る組織から、社員とともに文化を育てる組織へ。
来期(創業60周年)からは、方針に基づく評価制度と給与の連動も検討しています。
■今後の展望
西山氏は、「強い者が生き残るのではなく、変化に柔軟に対応できる企業であり続けること」が大切だと語ります。
今後は、
○調達・製造・販売の基盤強化
○海外展開の加速
○M&Aを含めた事業の拡大
などを見据えています。

10年の振り返りから、企業の成長には
売上づくり(利益・付加価値の創出)と、組織づくり(維持・発展)の両輪が不可欠
であると実感しているといいます。
外部環境が変わり続ける中で、学びを止めず、課題に向き合い続ける姿勢こそが経営者の責務である──その言葉が印象的でした。
今回の報告は、変化に挑み続ける姿勢と、組織づくりに向き合う大切さを再認識する学びの機会となりました。

