【第2分科会】変革する組織【経営フォーラム】

創業90年以上の歴史を持つ株式会社佐野テックは、長い歴史に甘んじることなく、常に「人」を中心にした組織づくりを続けてきた企業です。
今回の分科会では、代表取締役社長・佐野貴代氏より、同社が大切にしている経営理念、人材育成の取り組み、そして次世代を見据えた組織改革について報告がありました。

■佐野テックの歩みと経営理念
佐野テックは1932年、四日市で船場として創業し、現在は インフラ事業 と 建築事業 を柱に展開しています。支承金物や伸縮装置など橋梁に欠かせない製品を手がけ、売上の約8割をインフラ事業が占めています。社員数は68名、平均年齢は38.41歳と若手が活躍する企業でもあります。

同社の経営理念は「私たち佐野テックは人と社会の幸せを創造する企業です」。
技術だけでなく、地域や社会に貢献する姿勢が色濃く表れています。

さらに、創業以来大切にしてきた使命があります。
「何でも断らず、良い品物を、決まった納期に、必ず納入すること」
担当外の仕事でも一度持ち帰り、仲間と協力して取り組む社風が、この言葉を支えています。

■ “人が育つ組織”をつくる取り組み
佐野テックが強みとするのは、社員の愛着と意欲を引き出す エンゲージメント経営。その中心には、次のような取り組みがあります。

○カタカナの「カイゼン」活動
1998年、工場の天窓から雨が入り、床が水浸しになった出来事がきっかけでスタートしました。
特徴は、悪いところを直す「改善(漢字)」ではなく、良いところを伸ばす「カイゼン(カタカナ)」。
2009年からは社外向けのカイゼン見学会を開催し、これまでに42回を実施。掃除や明るい挨拶、人前で話す経験など、社員の成長の場としても機能しています。

○ATO会(アトー会)
「遊ぶ・楽しい・おもしろい」の頭文字から名付けられた社内親睦会。
毎月1,500円を積み立て、運動会、夏祭り、旅行などのイベントを企画。仕事以外での交流が、互いの理解や連携を深めています。

○多能工育成・全員営業の実践
多能工の育成により、誰かが休んでも止まらない現場づくり
部署に関係なく営業マインドを持つ「全員営業」
会社行事を大切にし、一体感を生む仕組みづくり

小規模企業だからこそ、一人ひとりの力が組織全体に影響する仕掛けが整えられていました。

■次世代を見据えた組織・人事改革
佐野社長は、企業が持続的に成長するためには「停滞しない組織」が不可欠とし、次のような改革を進めています。

○次長ポストの新設
2025年7月、若手を抜擢し次長制度を新設。将来の幹部候補を計画的に育てる仕組みを整えています。

○管理職のシャッフル人事
同年には、インフラ事業部の課長全員を部署横断で異動。
加工課長が溶接へ、物流課長が品質保証へといった配置転換により、新しい視点や刺激を組織に生み出しました。

○積極的な採用・育成
地元イベントや学校と連携した採用を積極展開。未経験の若者も受け入れ、ゼロから育てる方針を貫いています。リファラル採用も活発で、社員が「紹介したい」と思える職場づくりが特徴です。

■変わり続ける組織であるために
佐野テックの報告からは、歴史ある企業でありながら、「変えるべきものは変え、守るべき文化は大切に育てる」という明確な経営姿勢が伝わってきました。

カイゼン活動で培われた良い文化を土台に、エンゲージメント経営と人事改革をかけ合わせる取り組みは、これからの中小企業にとって多くの学びを与えてくれる内容でした。

今回の分科会は、参加者にとって自社を見つめ直し、「人が育つ組織づくり」について考える大きな学びの機会となりました。

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